研究成果(平成20年度)

研究成果の詳細は「平成20年度 年次報告書」 ( pdfファイル )をご覧下さい。

環境物質動態研究部門

海泥底質のEPSの底質の凝集性について検討をおこなった。その結果、底質より多糖類を抽出したときに、マトリックス構造に影響するウロン酸が検出された。また流動特性の履歴曲線よりEPSが安定化に大いに寄与していることが明らかとなった。

筑後川干潮河道の湾曲部において高濁度水塊の横断分布特性とSS輸送フラックスについて検討した。その結果、高濁度水塊が遡上する際に湾曲の二次流の影響で内岸側をSSがより多く通過することが明らかになり、内岸川でシルト・粘度が体積しやすい環境になっていることが示された。

有明海研究プロジェクトが開発中の懸濁物質輸送パラメータとしての再懸濁条件を推定した。その結果再懸濁条件として再懸条件のマッピングと現地での懸濁物質の沈降速度を取得することができた。

海苔から分泌されるEPSの底質に与える影響性について検討した。その結果、有明海奥湾部の特に軟泥広域でベントスの定量調査をおこなった。その結果群衆構造においても、季節変動パターンは干潟、季節感によって違わなかった。nMDS解析により筑後川、六角川、塩田川で違いが大きくなった。SIMPER解析もおこなった結果、シズク貝が季節間での違いに対する奇与が相対的に高かった。

海苔は増殖過程において炭水化物を分泌し、その割合は11%である。この分泌物を回収し底質と混合させ、そのレオロジーを測定すると凝集作用を示した。



干潟底質環境研究部門

全鉄は沿岸近くで海底にはかなり高濃度で存在し,その濃度は,天候にそれほど影響を受けず,地点の差が大きかった.一方,可溶性鉄は全鉄の濃度の数%から多くて10%であり,可溶性鉄の濃度は沿岸がかならずしも高濃度でなく,地点による違いよりも天候に影響を受けやすく,梅雨明けに沿岸から遠い地点で高濃度の可溶性鉄の濃度が観測された.

可溶性鉄の濃度が低いときに,沿岸地点の海面でシャットネラの発生が起きた.しかし,8月5日頃のシャトネラの発生は可溶性鉄の濃度と関係があった.特に海底でのシャットネラの発生は鉄の濃度と相関があった。シャトネラの移動も考えられる.可溶性鉄はプランクトンの発生を促進するが,プランクトン間の競争によりシャットネラの発生は影響される.

2層ボックスモデルによる解析結果より,奥部西岸域では夏季の貧酸素水塊の発生に大きな影響を及ぼす密度成層強度及び躍層を挟む表層と底層間の鉛直拡散係数については,約10年毎の経年的推移に大きな変化が見られなかった.しかし,底層の酸素消費速度については,1980年代以降,高い生化学的DO消費期間の早期化と長期化が伺われた.その要因の1つとして,高いろ過機能を有する二枚貝類の激減に伴う底層中の懸濁態有機物の増加が推察された.

奥部干潟域における脱窒菌群数の季節毎の分布性と底質特性や底質環境との関連性が把握された.また,奥部の典型的な干潟である泥質干潟における平均脱窒菌群数の経時的変動と底質環境のそれとの関連性さらには鉛直分布性などが明らかにされた.さらに,泥質干潟底質中の脱窒作用の大部分は,海底直上海水中の硝酸態、亜硝酸態窒素を基質として利用していることが示された.

湾奥東部では細砂分以下の小さな粒子の堆積が進んでいることが明らかになり,湾奥東北部の工区では覆砂施工直後より貝類が多く生息していることが示唆された.また,湾奥東北部の工区では施工後6年経過して覆砂上部への堆積が進行しているものの,サルボウの生息に適した環境であることが示された.



環境モデル研究部門

有明海流入全1級河川について,河川流域からの流出・負荷モデルを構築した.また,現地調査によって平野部クリーク地帯からの直接負荷の見積もりが可能となった.さらに,GISによる負荷量データベース化を進めた.

諫早湾における底質・懸濁物質の動態を解明するために,環境物質動態研究部門と共同で詳しい現地調査を実施した.

FVCOMをベースとした有明海懸濁物輸送モデルの改良・精度検証をおこない,現況を充分に再現できるモデルを実用化することに成功した.

上記モデルを用い,諫早湾締切がある場合と無い場合について数値計算を行い,懸濁物輸送に対する諫早湾締切の影響を調べた.

FVCOMをベースにした有明海低次生態系モデルを構築し,夏季の植物プランクトンと貧酸素水塊の大潮小潮周期変動について検討した.

7〜8月に高頻度の現地調査をおこない,Chattonella赤潮の発生機構を明らかにした.また,フローサイトメトリーを用いて野外におけるChattonellaの分裂速度を見積もることを目的として実験を行った.

2008年8月に諫早湾で発生した青潮の発生機構について検討した.