プロジェクト長挨拶

プロジェクト長 山下宗利

プロジェクト長
山下 宗利

佐賀県有明海沖では10月18日にノリ養殖の種付け作業が一斉に始まりました。赤や青、緑のノリ網がきれいに並べて張り込まれ、有明海にとって欠かすことのできない風物詩となっています。佐賀県のノリ養殖業はここ6季連続で日本一を記録しています。しかし昨年度は鹿島地区ではノリの不作が生じ、またタイラギをはじめとする二枚貝の不漁が依然として続き、一律に喜べない状況です。今年度の豊漁を心より祈念しています。


瀬口前プロジェクト長の後任として、この10月にプロジェクト長を拝命致しました文化教育学部の山下です。有明海総合研究プロジェクトではコア3(地域文化・経済研究部門)に所属して研究を進めてきました。本プロジェクトは2005年から5年間の期限で始まりましたが、今年度はその最終年度にあたります。しかも残された期間は半年足らずです。その間に佐賀大学有明海総合研究プロジェクトとしての最終のとりまとめを行い、来年度以降の有明海研究にスムーズに移行させる、という重大な責務を担っています。


これまでの有明海総合研究プロジェクトは、三つのコアがそれぞれの得意分野を活かし、協力と連携を保ちつつ研究および社会貢献の両面において成果を生み出してきました。コア1では高精度の有明海における3次元流動・懸濁物シミュレーションモデルの開発、上記モデルをベースにした生態系モデルの開発、有明海奥部の環境モニタリング体制の確立、貧酸素水塊の形成と変動機構の解明などがあげられます。コア2ではビブリオ・バルニフィカス感染症対策を中心に、佐賀県庁健康福祉本部健康増進課を含む佐賀及び福岡県内18の関連医療施設からなる「ビブリオ・バルニフィカス感染症ネットワーク」を構築しました。ネットワーク管内での患者発生状況等について情報の共有化を図りながらリスク患者への啓発を行うことで、患者発生の予防に努めてきました。またコア3では有明海沿岸域における地域住民の生業や伝統的な漁撈活動、これにもとづく環境認識や民俗知等の生活文化の研究を進め、有明海学の構築を目指した取り組みを行ってきました。これらの研究成果や社会貢献はきわめて大きなプロジェクトの成果だと自負できます。


佐賀大学は2008年に「佐賀大学中長期ビジョン(2008〜2015)」を策定しました。これは佐賀大学憲章に基づき本学の目指すべき方向性とその方策を示したものであります。「有明海をめぐる環境問題」は、その中で重点領域研究の推進の一つとして取り上げられ、実現に向けての主要な取り組みと位置づけられています。これまでの有明海総合研究プロジェクトは、コア研究者とともに全学的な協力体制で研究と教育を進めてきました。また地域の皆様方のご支援とご協力の下で研究を遂行することができました。「有明海をめぐる環境問題」を今後とも地域課題として中心に据え、有明海の教育と研究を推進していきたいと考えています。


わずか半年間ですが、残された課題を一つでもクリアーできるよう努めていく所存です。今後とも有明海総合研究プロジェクトへのご協力とご支援、ご鞭撻を賜りますよう、どうかよろしくお願い申し上げます。


平成21年10月末日